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【Vol.2】シニア期のグルーミング ~負担をかけない、おうちケアのコツ~

Grand Harvestは、商品を提供するだけでなく、7歳からの愛犬との暮らしに役立つ情報や知識を、社内外の専門家と一緒にお届けしていきます。

第2弾はおうちでおこなうグルーミングについて、株式会社チップスの伊佐 美登里さんに教えていただきます。

7歳からのおうちケア ~「一緒に」紡ぐ、愛おしい時間~

■おうちケアの目的と大切さ

おうちケアとは
おうちケアとは、飼い主さんがご自宅で行うグルーミングケアのことです。
本来犬たちは、自分自身で体の清潔を保つセルフグルーミングを行います。これは体を清潔にするだけでなく、リラックスしたり、仲間同士で愛情を確かめ合ったりする、犬にとっての「癒しの時間」でもありました。

ただ、改良された現代の犬たちは、さまざまな理由から自分自身でグルーミングが難しい場合があります。人の手で行うグルーミングが、清潔を保つことに加えて、犬にとって心地よく過ごせる時間や、やさしいコミュニケーションの時間になっていくことが大切なのです。
日常的にやさしく触れられる経験が増えることで、犬にとって「人に触れられる=安心できること」へとつながり、ケアに対する受け入れやすさも育まれていきます。
また、そのような時間を通して体の変化にも気づきやすくなり、病気の早期発見にもつながっていきます。

また、愛犬のグルーミングは一生を通して続いていくものです。
「今日はうまくできなかった…」とその時の結果だけで捉える必要はありません。長い目で見守りながら、少しずつ慣れて、できることを増やしていけたら十分です。
そうした毎日の積み重ねが、シニア期になっても穏やかにお手入れを受け入れてくれる姿につながっていきます。
これは、おうちでのケアでもサロンでのケアでも同じなんですよ。

おうちで行うケアには、ブラッシングや歯磨き、爪切りなどさまざまありますが、犬種、年齢、被毛の状態や体調、飼い主さんの考え方や生活スタイル、経験によって、どのケアをするのか、しないのか、プロに任せるのかは違ってきます。
まずは基本的な考え方を理解していただき、かかりつけの獣医さんやサロンの方と相談しながら進めてみてくださいね。

シニア期のおうちケア3つの大切な目的
①心のつながりを深める:毎日一緒にいるのが当たり前になると、忙しさの中で意識的なふれあいの時間が減ってしまうことも。ケアを毎日の「日課」にすることで絆がぐっと深まり、愛犬の心の健康にもつながります。

②快適で健やかな毎日を守る:代謝が落ちてくるシニア期は、可愛くカットすること以上に「清潔にしてあげること」が健康に直結します。また、体が変化して自分でお手入れしづらくなってきた時、大好きな飼い主さんに触れてもらうことで、大きな安心感とリラックス効果を得られます。

③小さな異変に気付く:毎日触れていると、「いつもの状態」がわかるようになります。実際に、毎日の歯磨きを日課にしていた飼い主さんが「お口の中がいつもと違う」と気づき、メラノーマの早期発見・切除につながったケースもあるんですよ。これも、毎日のケアの賜物ですね。

シニア期のおうちケアを行う上で大切にしてほしいこと
完璧を目指さないで、ゆるやかに:シニア期のケアは、判断や関わり方に少しの余白や“ゆるさ”を持っておくことが、結果的に愛犬の安全につながります。もし愛犬が嫌がったり、呼吸や心拍数が上がったりしているときは、無理をせずに「やめる」という選択をするのも大切な愛情です。愛犬が快適に感じているかを一番に考えて、「今日はここまでにして、また明日やろうね」と声をかけながら、その子のペースに合わせてゆったりした気持ちで向き合ってあげてくださいね。ご家庭では難しいなと感じたら、無理せずプロに頼るという選択肢を持っておくことも安心につながります。

「今の愛犬」を受けとめる:年齢を重ねて、今までできていたことができなくなるのは、とても自然なことです。昨日までさせてくれたのに今日は嫌がる…そんなときも、「できなくなっちゃった」と捉えるのではなく、まずはそのままの愛犬を受け止めてあげましょう。ありのままを受け止めてもらえることは、犬にとって何よりの安心です。長く一緒に過ごしてきた飼い主さんだからこそ、変化ごと受け止めてあげることが大きな支えになります。「どこか痛いのかな?」「今日は気分じゃないのかな?」と、その子なりの理由にそっと寄り添って、どんな関わり方がよいか考えてあげてくださいね。

■7歳からの具体的ケア

ここでは犬種を問わずおすすめしたいケアをご紹介します。愛犬の体調やこれまでの経験に合わせて「どこまでやるか」を決めてくださいね。 嫌がったら手を止める、「今日はその気分じゃないね」と笑って終われるくらいの“ゆるさ”を大切にしましょう。

[観察]
お手入れの作業そのものに集中するよりも、ケアしつつ愛犬の動きや表情などを観察してください。ケアの中で最も重要です。

おうちケアチェックシート

[ブラッシング]
犬種により、ブラッシングの意味は多少変わりますが、すべての犬に共通なのが、毛を梳かす被毛の管理以上に、リラックスやコミュニケーションとしてのブラッシングを優先してください。

  • 使用する道具:天然毛ブラシ(獣毛ブラシ)
  • ブラッシング方法:
    心臓の音よりもゆっくりのスピードで、愛犬が気持ちよいと感じているかどうか観察しながらおこなってください。
    肢先やお尻周りなど嫌がる箇所があれば、その箇所は避けてください。
  • おすすめのタイミング:
    お散歩から帰ったときや、お部屋でゆったりしている時間に行ってください。
    *介護期の場合は、褥瘡を防ぎ、血流促進にもつながりますので、数時間ごとに行うのもよいでしょう。

[足回り、顔などの清拭]
シャンプーやサロンでのケアの負担を減らすためにも、汚れをためないこまめなケアが大切です。そのために、汚れたら拭く「清拭」を行います。

  • 使用する道具:ぬるま湯とタオル
    ※汚れがひどい場合は、水のいらないシャンプーや拭き取り用の洗浄剤を使用してもよい
  • 清拭方法:
     <お顔や足回りなど部分的な汚れ>
     硬く絞ったタオルでやさしく拭いてください。
     <耳の汚れ>
     見える範囲を拭いてください。
     汚れがひどい場合、腫れがある、つんとした臭いがある場合は、動物病院に行って診察してもらいます。
     <全身を清拭する場合>
     頭から下へ下がっていきタオルのきれいな箇所を使いながら、足周り→排泄箇所と移動してください。

[シャンプー・爪切り]
おうちで行っている飼い主さんも多いと思います。犬も飼い主さんも慣れているなら、それまで通り行っていただいて問題ありませんが、嫌がるようなら無理に行わず、サロンや動物病院にお願いしてください。

特に、関節に課題がある場合や、呼吸器・循環器に疾患がある場合は、その子の状態によって適したケアが変わります。無理におうちで行おうとせず、動物病院と相談しながら進めていくことも大切です。

【7歳からのおうちバリカン】

ここでは、私のライフワークでもあるバリカンについてお伝えします。
シニアになると、サロンへの移動や、見知らぬ場所で長時間立っていること自体が大きな負担になることがあります。だからこそ、足裏やお尻周りなど『衛生上どうしても必要な部分』だけでも、おうちで飼い主さんがサッと短時間でトリミングすることができれば、愛犬のストレスを劇的に減らしてあげることができます。
ただ、バリカンはプロでもケガをさせてしまうリスクのある道具です。
安全で正しい使い方を知っていただくこと。そして「絶対に無理をしないこと」を心に留めて読んでみてくださいね。

■バリカンってどうやって切れるの?
①バリカンの刃の構造と切れる仕組み:
バリカンの刃は2枚の刃(上刃と下刃)で構成されており、上刃が左右にスライドすることで、下刃との間に毛が入り、毛がカットされる仕組みです。

②どこに刃がついているか

  • 上刃:先端まで刃がついています。
  • 下刃は先端には刃がついていません。

つまり、下刃は毛を誘導するくし(コーム)の役割が強く、下刃と上刃の間に被毛を導くことで、切断が行われます。
このようにバリカンの刃の仕組みは一見複雑に見えて、実はとてもシンプルです。
この構造を理解することで、どのような当て方をするとケガにつながりやすいかをイメージしやすくなります。

③ケガをしてしまうメカニズム:

  • 皮膚に刃が直接当たっていなくてもこんな理由でケガをしてしまうことがあります。
     ―刃の隙間に皮膚が巻き込まれ、皮膚が裂ける
     ―上刃の先端が皮膚に近すぎて起きるバリカン負け(赤み・炎症)。

■おうちケアで行うバリカン(足回り・肛門まわり)
足回りや肛門まわりのケアは、こまめに行うことで衛生を保ち、犬が快適に過ごすためのサポートにつながります。
また、飼い主さんと犬の双方がバリカンに慣れている場合には、無理のない範囲で部分的なケアから始め、介護期など状態に応じて全身のトリミングへと広げていくことも選択肢のひとつです。

特にシニア期は、移動や環境の変化が負担になりやすく、トリミングそのものより「通うこと」が大きなストレスになるケースもあります。
そのため、おうちでこまめにケアができると、犬の負担を抑えながら清潔な状態を保ちやすくなります。

一方で、ケアのタイミングが限られてしまうと、毛が伸び切ってからやむを得ず来院・来店することになり、結果として犬への負担が大きくなってしまうこともあります。

■おうちでバリカンを控えたいケース

  • バリカンに対して恐怖がある
  • 触られること自体に強い抵抗がある
  • アトピーやアレルギー体質など、皮膚が薄くデリケートな状態 など

■バリカンを使う前に
まずは、バリカン自体に犬を慣らしてください。最初は動かさずに、怖がらないようなら、遠くで動かして音に慣らす、少しずつ近づけて目の届かない部分からやってみてください。
犬が嫌がる反応を見せたらすぐに止めて、その日はそれで終了してください。

■バリカンの動かし方
ポイント1:皮膚に水平に動かす
ポイント2:視野を広く取る(車の運転と同じ)
ポイント3:左手(固定の手)は、皮膚を伸ばすために使う(引っ張るのではなく、そっとテンションをかける)

■お尻周りのバリカンの動き

■足回りのバリカンの動き

■最後に・・・

今日から始まる、新しい愛情のかたち

シニア期のグルーミングは、「きれいにするため」だけに行うものではありません。
撫でる、梳かす、拭く。
そのひとつひとつの手元から伝わる体温が、愛犬にとって何よりの安心感となり、深い絆を育む時間になります。

「嫌がったら、また明日やればいい」。
そんなゆったりとした気持ちで、まずは1日5分、天然毛ブラシで優しく撫でることから始めてみませんか?

年齢を重ねて、できないことが増えてきたとしても、あなたのその手で「してあげられること」は、まだまだたくさんあります。
愛犬と見つめ合いながら触れ合うおうちケアの時間が、おふたりにとって最高に愛おしい「実り(Harvest)」となりますように。

執筆者紹介
伊佐 美登里 株式会社チップス代表/グルーマー/ 愛玩動物看護師/ ウェルケアグルーミング講座主宰
https://tipspet.jp/
“医療とケアの視点”を持つグルーマー育成の「ウェルケア・グルーミング」を提唱。動物病院での18年におよぶ勤務経験を持ち、グルーマーとしての豊富な技術と愛玩動物看護師としての医療知識を併せ持つ。シニア犬ケアや終末期ケア(エンゼルケア)を得意とし、現在は全国のトリマー・動物看護師に向けた人材育成講座の講師を務めるなど、犬と人のQOL向上に広く尽力している。

また、所持するバリカンは62台、シザー59丁、ブラシは数え切れない【道具マニア】
「自分の苦手は道具に頼る」をモットーに、あらゆる道具を使い分けて、犬の負担を軽減するグルーミングを日々追求している。

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