株式会社バンガードインターナショナルフーズ 獣医師 遠塚谷
「体重が増えたけど、ダイエットしたほうがいい?」「この子は太っているのかな?」愛犬の体重管理に悩む飼い主様は少なくありません。
でも、犬の「理想の体重」は、実は一頭一頭違います。大切なのは、体重計の数字だけを見るのではなく、愛犬の体型を実際に「見て、触って」確かめること。今回は、獣医師の視点から、BCS(ボディコンディションスコア)をもとにした愛犬の適正体型の見方と、無理なく続けられる体重管理のコツをご紹介します。
肥満のリスクと、太ってしまう「2つの原因」
「ぽっちゃり=かわいい」の裏にある健康リスク
予防医療の視点からみると、肥満は単なる見た目の問題ではありません。関節(膝蓋骨脱臼や変形性関節症)、循環器・呼吸器(心臓病や気管虚脱)、代謝疾患などのリスクを高める「病気の引き金」となることがわかっています。
以前、ご友人とよくドッグランに来られていたシーズーちゃんがいました。いつも呼吸が荒くハアハアと辛そうで、飼い主様も「ドッグランが好きではないのかな…」とおっしゃっていました。そこでダイエットをご提案し、時間をかけて無理なく減量していただいたところ、呼吸が見違えるように整い、軽やかにドッグランを走り回るようになったのです。あの楽しそうな姿は、今でも忘れられません。
太ってしまう裏に隠れた「2つの原因」
1. 過度な食事制限による「代謝の低下」
フードの裏面に書いてある「規定量」はあくまで目安であり、避妊・去勢の有無や活動量によって必要なカロリーは異なります。よくお伺いするのが「太るのが心配で、フードを極端に減らしてしまう」というケースです。実は過度な食事制限は代謝を落とし、「エネルギーを燃やしにくい体(省エネモード)」を作る原因になります。体に必要な栄養が足りなくなると、老廃物が蓄積したり、疲労感が抜けなくなったりと、人間と同じように生活の質(QOL)が低下してしまいます。
2.ご家族間での「おやつの把握不足」
「フードをあまり食べないのに太ってしまう」というご相談もよくあります。ご家族みんなで暮らしているご家庭で多いのが、各自が良かれと思っておやつを与え、結果として規定量を大きくオーバーしてしまっているケースです。お腹がいっぱいになってドッグフードを食べなくなり、結果として栄養バランスが崩れてしまう悪循環に陥ってしまいます。
数字の不安と、適正体型の知り方
日常のご相談の中でも、特に高い関心が寄せられているのが「愛犬の体重管理(ダイエット)」です。
多くのお客様が「数百グラム太ってしまった」「なかなか数値が変わらない」と不安を感じられています。しかし、体重計の目盛りは水分補給や排泄、測定する時間帯によっても容易に変化するため、数字だけでは正確な適正体重を把握できません。
また、人間の場合は、「InBody(インボディ)」などの体組成計を使い、微弱な電流を流して筋肉量や体脂肪率を正確に測定する方法が一般的ですが、ペットの世界ではこうした機械での測定は一般的ではありません。全身を被毛で覆われていること、測定中に静止するのが難しいこと、そしてチワワから超大型犬まで犬種ごとの個体差が大きすぎることなどが理由です。
(※研究機関などでは特殊なX線やCT検査で測ることも可能ですが、高額なうえ麻酔が必要になる場合もあり、日常の健康管理には向きません。)
では、犬や猫の適正体形を知るにはどのようにすればよいのでしょうか?
動物医療の現場では「BCS(ボディコンディションスコア)」という、人の「目と手」を使った触診・視診による評価が世界的な標準になっています。犬種や年齢、骨格や筋肉量によってベストな体重が一頭一頭異なるため、「体重(kg)」という数値だけではなく、「体型(BCS)」で、判断しています。
おうちでも目と手を使った「3ステップの体型セルフチェック」
ペットの健康管理は「目と手」が一番の測定器!
ぜひおうちでも月に一回は、愛犬とのスキンシップを兼ねてご自宅でBCSをおこなってみましょう。
STEP 1:肋骨(胸の横)を触る
理想: 軽く手を滑らせるとあばら骨に触れる(手の甲の骨を触る感覚)
ぽっちゃり: 脂肪に覆われて骨が触りにくい(親指の付け根の肉を触る感覚)
STEP 2:真上から背中を見る
理想: 胸から腰にかけてキュッとなだらかな「くびれ」がある
ぽっちゃり: くびれがなく「寸胴」または樽(たる)状に丸い
STEP 3:真横からお腹を見る
理想: お腹のラインが後足にかけて切り上がっている
ぽっちゃり: お腹が地面と平行、または垂れ下がっている
無理のない体重管理「4つのコツ」
今日からできる!無理のない体重管理「4つのコツ」
愛犬に我慢をさせず、健康的に痩せるためのアプローチをご紹介します。
1.フードの量を「グラム(g)」で可視化する
最初はキッチンスケールで正確に計量しましょう。いつもの「専用カップ」を決め、適量のラインに印をつけておくと、ご家族だれでも同じ量を一日に分けて与えやすくなります。
2.おやつは「量」ではなく「回数」で満足させる
ワンちゃんは「1回の大きさ」よりも「もらった回数」で満足感を得やすい習性があります。1粒を細かく割って与えるなど工夫しましょう。※おやつは1日の必要カロリーの10%以内に抑えるのが鉄則です。
3.「1日のおやつ専用ケース」をつくる
密閉容器などに「1日に与えていい分のおやつ」を毎朝まとめて入れておき、「その容器の中からしか与えない」というルールをご家族で共有しましょう。
4.食事の工夫(ウェットフードやトッピングの活用)
カロリーを抑えつつ満腹感を出すために、水分量の多いウェットフードを混ぜたり、ドライフードをぬるま湯でふやかしたりする工夫も大変効果的です。
【ポイント】
急激な食事制限は筋肉量を落とし、基礎代謝を下げるため逆効果です。月に現体重の2〜3%程度を目安に、ゆるやかな減量を心がけましょう。
まとめ
体重管理は愛犬への「未来のプレゼント」
体重管理は毎日の小さな習慣の積み重ねであり、継続こそが力です。愛犬の健康寿命を延ばし、1日でも長く元気に一緒に過ごすための体重管理は、家族から愛犬への「未来のプレゼント」です。
なお、持病がある場合や、適切な食事管理を行っても体重が落ちない場合は、別の疾患が隠れている可能性もあります。不安なときや困ったときは、気軽にかかりつけの獣医師にご相談ください。





