第3回 デデ&にこ(ウエストハイランドホワイトテリア)
愛犬と飼い主は、さまざまな形の絆で結ばれています。パートナーとして歩んできた道には、それぞれのかけがえのない物語があることでしょう。毎日の散歩を通じて、私たちはその愛の物語を紡ぎます。本連載では、そんな皆さんの「散歩みち」を紹介していきます 。
第3回は、ウエストハイランドホワイトテリア(ウエスティ)の「デデ」(♂10歳)と「にこ」(♀4歳)と暮らす廣谷満さん・裕美さんご夫妻。共働きで子供がいないご夫妻にとって、デデとにこは我が子そのものだと言います。月に1、2回楽しむという犬連れキャンプにお邪魔して、白犬たちと歩く「散歩みち」の一端を覗かせてもらいました。(内村コースケ / フォトジャーナリスト)
毎朝公園で駆け回り夕方まで熟睡
共にIT関係の仕事に就く廣谷さんご夫妻。コロナ禍の今は自宅でのテレワークが多い。朝の散歩はおもに満さんの役目。仕事が始まる前に毎朝7時半か8時には近所の広い芝生広場がある公園に行き、9時くらいまで過ごす。デデ&にこは、馴染みの犬たちと元気に駆け回る。写真が趣味の満さんは、その様子を毎日たくさん撮影して、SNSにアップするのを楽しみにしている。
「コロナ前は、僕たちが出社すると、夕方に帰ってくるまで犬たちはずっと寝ているだけ。一度試しに(犬たちに)万歩計をつけたのですが、一歩も動きませんでしたね。自然とそういう生活リズムになったようです。テレワークの今も、散歩から帰ってきたらそれぞれ寝室に行って寝たりとか、マイペースです。こちらは仕事中にちょっかいを出されたくないのでちょうど良い感じです」。
お兄ちゃんのデデは、穏やかな性格で、しつけに苦労しなかった。自分のことを人間だと思っているフシがあり、小さな子供にイタズラされたりしても決して怒らない。妹分のにこは、「自分が世界の中心」。ワガママな末っ子気質だが、「怒ると本当は怖い」お兄ちゃんを立てたり、初めてのドッグランや遊具では慎重になる面も。まさに目に入れても痛くないかわいらしさに溢れている。
パコッと開けたら天使が出てきた
子供に恵まれなかったこと、裕美さんの実家で飼っていたヨークシャーテリアをキャンプに連れて行って楽しかったことなどから、いつの頃からか犬を飼おうと思っていた。いよいよ実行に移すためペットが飼える横浜市内のマンションに引っ越したのが東日本大震災があった2011年の少し前のことだ。
「でも、二人で欲しい犬のタイプが全然違ったんですよ。僕はボストンテリアとか、ああいうタイプの犬が欲しかった。裕美は最初はトイプードル。ジャックラッセルテリアもいいと言っていたけれど、運動量が多いと聞いて断念。そんな時に外国のケーブルテレビ番組でウエスティが紹介されていて、もうすごくかわいい。『なんだこの犬、これにしよう』と言って(笑)」
ウエスティのブリーダーは国内には多くはない。少ない選択肢の中で、Googleマップの航空写真で広い敷地で育てていることを確認し、HPに書いてあることに共感したブリーダーに決めた。希望する性別を伝えるだけで、ブリーダーが勧める子犬を迎えるシステム。「最初のデデの印象は、ただただかわいい(笑)。待ち合わせ場所でブリーダーさんがケージの扉をパコって開けたら出てきて、本当、天使かと思いました」。
我が子同然
「どこへでも一緒に行くし、子供と一緒ですよ。何か、ペットというものがよく分からないんです。僕らには子供がいないから(子に対する気持ちが)よく分からないのと同じように、じゃあペットってなんだろうって。たとえばフェリーに乗っていて沈没しそうになった時に、人間優先と言われて本当にこの子たちを置いていけるのかと問われれば、自信は無いですね。多分、そういうことじゃないですか」
デデを迎えた直後に震災があった。二人とも東京の職場にいて、デデは横浜の自宅で留守番していた。不測の事態に備えてwebカメラをつけていたため、ケージの中で無事でいる様子を確認できた。「2011年は結果的にすぐ帰れました。でも、もし橋が崩れたりして3日くらい帰れなかったらどうしようって今も思います。その時は泳いででも帰るという覚悟だけはしているのですが・・・」。今はテレワークになって、その点ではとても気が楽になったと言う。
にこを迎えたのも、「二人目を」という一般的な夫婦の希望と変わらなかった。特に満さんが娘が欲しかったので、デデと同じブリーダーから女の子を迎えた。そして、同じブリーダーの同じ犬種でも上の子と下の子では個性が全く違うことを思い知らされた。「デデはしつけで苦労したことはほとんどなかったですね。ちょっと頑固なところ以外は、あまり吠えないし。だから、自分たちは飼い方が上手なんだな、と思っていました。そうしたら、にこが来たらそういうわけでなかった。犬はしつけなければいけないものだと思い知らされました(笑)」
よくキャンキャンと吠え、デデよりも一回り小さい体で隙間をすり抜け、テーブルの上に上がってイタズラをするような子犬だった。「知恵が回る。頭の回転がいいの」と、にこの性格を語る満さんはとても嬉しそうだ。しつけに苦労した反面、天真爛漫でかわいい。そんなところも、人の親と感覚は変わらない。
犬がいれば寂しくない
もともと旅行好きで、以前は飛行機で海外や沖縄などにも行っていたが、今は犬たちと一緒に車で行ける範囲に絞っている。国内にはペットと宿泊できる施設がまだ少ないこともあり、最近は犬連れキャンプにはまっている。もともとの趣味のカメラ用品に加え、キャンプ用品に「ちょっと遣いすぎですね」と、満さんは苦笑する。
時には、裕美さんとにこを残し、デデと「男だけのキャンプ」もする。一人っ子だった期間が長かったデデのために、時には息抜きが必要と考えているからだ。コロナ禍でステイホームが推奨されるようになると、自宅リビングにテントを張った。今ではすっかりデデとにこのお気に入りの空間だ。そんなニューノーマルが浸透しつつある生活にあっても、犬たちの写真を撮るのが、満さんの人生の一部なのは変わらない。
「誰かに写真を見てもらうというとアマチュアの自分にはSNSしかないので、友だちに笑われながらも、毎日同じような犬の写真を載せています」。犬を飼う前は旅先の風景や止まっている車のディテールをよく撮っていたが、デデを迎えてから、アクティブな犬の写真が効率的に撮れる高価な機種に買い替えた。
「なんかこう、デデらしいな、にこらしいな、という写真が撮れると嬉しいですね。オフ会などで撮影係になることも多いのですが、それぞれの犬の飼い主さんが喜ぶ写真が一番いいんだろうな、と思いながら撮っています」
犬たちの食事は、ずっとブリーダー時代から採用していた『ナチュラル・ハーベスト』。デデがシニアの年齢に達した今も、2頭とも大きな病気はしていない。まだしばらく平穏な4人暮らしが続きそうだ。
「今はテレワークで家にいる時間が多いので余計に思うのですが、やっぱり犬がいて良かったと思います。夫婦二人だけで仕事をしながら家にいるとギスギスしちゃうんじゃないかな。若い一人暮らしの人などは、きっと友だちにも会えない引きこもりは辛いと思うのですが、犬がいると全然寂しくありません」
バンガードのドッグランに遊びに来てくださいました(2020年1月)